● 椎間板ヘルニア

 椎間板とは、背骨の椎体と椎体の間にあって、骨と骨がぶつからないように、或は、加わった力を吸収するショックアブソーバーの役目をしている、円板状の軟骨をいいます。

 椎体とは、背骨(脊柱)を構成する一つ一つの骨のことで、頚部にあるものが頚椎(7個)、胸部が胸椎(12個)、腰部が腰椎(5個)、骨盤の部分にあるのが仙椎(5個)、その下の尾椎(3〜5個)と言います。

 椎間板は、扁平なまんじゅうの様に、あんこの部分に相当するゼラチン状の髄核を、線維輪という皮が包んだ様な形をしています。背骨に負担がかかり、この髄核が圧迫されて横に膨らみ、周囲の線維輪を圧迫したり、線維輪のすき間から はみ出した状態を、椎間板ヘルニアと言います。

 そのはみ出した部分が、脊髄や神経根を圧迫して痛み(腰痛・神経痛など)麻痺をおこします。発生する場所により、次の様に分けられます。

  • 腰椎椎間板ヘルニア

  • 胸椎椎間板ヘルニア

  • 頚椎椎間板ヘルニア




● 腰椎椎間板ヘルニア

 腰痛をおこす病気の中で、一般的に最も多いのは腰椎椎間板ヘルニアです。急性、或は、慢性の力が腰にかかると、腰椎と腰椎の間にある椎間板の中心にある髄核が周囲の線維輪を膨隆させたり、その隙間からとび出して腰髄の神経根を圧迫し、腰痛や坐骨神経痛をおこします。最も多いのが第四と第五腰椎の間。次に第五腰椎と第一仙椎間で、両方で全体の90%にのぼります。

【原因】

 前かがみの姿勢や、中腰の姿勢を長時間続けると、椎間板の髄核は後ろに向って膨らみ、周囲の線維輪に隙間があると、そこから髄核の一部が脱出し、腰髄の神経を圧迫します。

 この段階は徐々に進行し、腰痛や足のしびれ・痛みをおこします。また、急激に重い物を持ち上げた時など、急激におこることもあります。

 ぎっくり腰(急性腰痛)を繰り返す内に、腰椎椎間板ヘルニアに移行することがあります。

【症状】

 腰痛と片側の坐骨神経痛です。最も多い第四〜第五腰椎間のヘルニアでは、膝下の外側から、足の親指にかけて痺れや痛みがあり、かかと立ちの力が弱くなるのが特徴です。
 また、第五腰椎と第一仙椎間のヘルニアでは、膝下の後面から足の外側、足の裏に痺れや痛みがあり、つま先立ちの力が弱くなるのが特徴です。

 急性の場合は、激しい痛みで立ち上がれないほどです。一般に痛みのため、体が左右どちらかに傾き、腰部の運動も制限されます。

【診断】

 既往症や、痛む部位の自覚症状の問診の他、視診、理学検査、x線検査を行います。場合によっては、脊髄や髄核に造影剤を注入しての造影検査、CTスキャン、MRI(磁気共鳴画像診断装置:X線CTの様に輪切り像の他に、縦割り像も得られる)などの検査を行います。

【心得】

 痛む時は、まず安静が第一条件。楽な姿勢で安静にすることが大切です。硬い寝具に仰向けに寝て、膝を立て膝下に大きなまくらか、座布団を折って込みます。横向きの時は、膝と股関節を60度位に曲げた海老の様な姿勢が楽です。患部を温めるか、冷すかは、本人の楽な方を選びます。
 普段より腹筋・背筋の筋力を強くし、状態の良い時にこそ腰痛予防体操などを心掛けることが大切です。

【治療】

 消炎鎮痛薬や筋弛緩薬が用いられます。また脊髄神経の周りを包んでいる硬膜の外腔に局所麻酔薬とステロイドホルモンの混合液を注射(硬膜外ブロック、硬膜外注射)で非常に有効な場合があります。

 急性期を過ぎれば、温熱療法や低周波療法に加え、牽引療法を行います。低周波による鍼治療も腰痛には効果的です。

 腰椎椎間板ヘルニアの多くは、手術無しでよくなりますが、しかし、これらの治療が無効で、強い痛みや麻痺が続く場合は、再検査の上、手術によって脱出した髄核を提出します。




● 胸椎椎間板ヘルニア

 胸椎部に椎間板ヘルニアがおこることは多くありません。

【症状/治療】

 肋間神経痛、下肢の痛み痺れ、麻痺、或は、知覚障害、膀胱、直腸が障害されて排尿異常や便通異常がおこることもあります。治療は手術の方が効果的です。




● 頚椎椎間板ヘルニア

 頚椎も腰椎に次いで負担がかかりやすく、ヘルニアがおこりやすい部位です。

【症状/治療】

 首、背中の痛み、上肢の痛みや痺れ、麻痺をおこし、まれに下肢に麻痺をおこすこともあります。安静にしているか、頚椎牽引療法が有効です。腰椎の場合と同じく、普段より周囲の頚肩部の筋力を強化することが大切な心掛けです。痛みや麻痺がひどければ手術を行います。


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