● なぜ腰痛はおこるのか?

 近頃、スポーツ等によって、健康を保とうとする傾向が高まって来た様です。美容と健康をキャッチフレーズに、多種のトレーニング施設や、カルチャーセンターが進出し、通う人も多くなりました。
 現代社会では、各職場でのコンピューター化が進み、以前のように、体を使う肉体労働的な仕事が少なくなっています。
 通勤や通学は、電車や車を頻繁に利用し、家庭においても、ほとんどの面で電化製品が進歩・合理化して主婦の代役を果たし、ちょっとした買い物にも車を使用するという日常生活になっています。
 その上、子供達にしても、昔の様に外で走り回って遊ぶことも少なく、殆どが塾に通い、その間は、家の中にこもってファミコンゲームと言った具合に、遊びに関しても、体を使う機会が少なくなって来ています。あなたの身の回り、生活環境、家庭ではいかがでしょうか・・・?。身に覚えはありませんか。

 これでは、私達の体が鍛えられる暇もチャンスもありませんから、筋肉や骨が弱くなり、肩こり・腰痛・膝痛などの色々な原因に、拍車を掛ける事になってしまいます。その上に精神的なストレスが加われば、我々の体はもうどうしょうもなく、その結果が、種々の肩こり・腰痛などの症状として現れて来るのです。しかし、これらの日常的環境を、それぞれの立場で理解した上で、腰の痛みの発生メカニズムを理解して、自ら積極的に対処していけば、症状に恐れることなく必ず、その効果が現れるはずです。
 勿論、なるべく早い時期に、適切な治療を受けて頂く事も大切な事ですが、治療したから安心と言う訳には行きません。せっかくの治療効果をどれだけ良い状態に引き上げるか、維持できるかと言う事は、皆さんの日常生活の気配りで補われます。職場、又は家庭で、ちょっとした生活法を知っていれば、それだけで肩こり・腰痛・足の痛み等が予防できるものなのです。

 ところが、その心得を知っている人は、驚くほど少なく、本人は良いと思ってしている事でも、本来はまったく逆効果的な事を間違ってしている。そんな状況もかなりある様です。その度に、注意と日常一番気を付けて欲しい事を説明するのですが、「どうして痛みが起こるのか?」と言う、基本的な原理を知っていないと、簡単な説明であっても、なかなか理解して頂けないのが現実の様です。
 毎日多くの肩こりや腰痛を訴える患者さんに接して、まず言える事は、事故や内臓の病気などの様に、原因がはっきりしている物以外は、なるべくして成った症状だ、と言えるのが実態です。

 そこで、本題の「なぜ腰痛はおこるのか」の注意点を含めて説明を致します。参考にして下さい。

 背骨の仕組みを理解する 

 人間と動物の違いは何か。それは、私たち人間は直立で2本足で歩く事です。先祖と言うべき猿は、手と足で体を支えて歩き、知能の発達した人間は、支える為の手を、道具を持つためのものにしました。しかし、2本足で歩く為には、細い首に重い頭を乗せ、体のバランスを取る必要がある。特に下半身、下肢や足に大きな負担が掛かる事になる訳です。
 その上、人間は立って歩いているだけではありません。物を持つためには、体を前に曲げなくてはなりません。仕事をするためには椅子に長時間座っていなくてはいけない事もあります。重い物を持ち上げなくてはならない事もあります。この様に、人間は、耐えず腰を使っている訳ですから、疲労したり、傷めたりする機会が多いのも、仕方のない事で、人間に生まれた宿命と言えるでしょう。

 私たちの体を支える背骨(脊柱・脊椎)は、上から首を支える骨「頚椎」7個胸の部分を支える骨「胸椎」12個、腰の部分を支える骨「腰椎」5個、骨盤を作っている骨「仙骨」5個「尾骨」3〜5個からできています。この脊柱は、横から見るとまっすぐではなく、頚椎は前の方に、胸椎は後ろ、腰椎は前の方にとちょうどs字状の形に曲がっています。これらの骨は、大きさ、形とも部位により多少違いはありますが、椎体と言う円筒状の骨と、その後ろに繋がる椎弓、その間には椎孔(脊柱管)と言う構成になっています。そしてこれらの骨(椎骨)そして、これらの骨(椎骨)は、椎間板と言う軟骨や、椎骨の後方にある左右の突起でも関節となって連結され、更に、骨と骨、骨と軟骨の繋ぎ目は、靭帯と呼ばれる弾力性に富んだ結合組織繊維で、しっかり支えられて、尚且、背筋と言う筋肉が付着して、体を前に曲げたり、起き上がったりできる様な仕組みになっています。

 この人間特有のS字カーブは、椎骨と椎骨の間にある椎間板が、前弯している所は前方が、後弯している所では後方が厚くなっている為の、特有な形状で、運動した時の衝撃を和らげたり、胸が圧迫されるのを防いだり、脊椎の回りの筋肉にあまり負担を掛けずに、バランスを保つためにも、大きな役目をしています。 ところが、このS字カーブは、姿勢が悪かったり、老化のために変形したりすると、カーブの形が変わって、腰痛や肩こりを起こす原因になってしまいます。

 椎間板とは 

 私たちの体が、まっすぐに立つだけでなく、重い頭や上体、腕などを支えながら、更に前に曲げたり後ろに反ったり、自由に動けるのは、頚椎から腰椎までの軟骨の間の椎間板と、弾力性に富んだ靭帯の伸びちじみがあるからです。椎間板は、椎骨と椎骨の間にあって、これをつなぐ役目をした、貝柱の様な形をしている弾力性ある楕円形の軟骨です。
 その真ん中には、小指の頭程の、大きなゼリー状の玉の入った髄核があり、その回りをぐるぐる取り巻き、髄核を保護する軟骨細胞を含んだ、丈夫な繊維の輪になった繊維輪があり、ボールの様に弾力があります。そして、この髄核のあるゼリー状の物質の中には、たくさんの水分(若い人で80%)が含まれており、この豊富な水分は、ショックを吸収するために、重要な働きをするのです。私達の脊柱に加わるストレスの70%は、この椎間板によって受け止められ、後の30%が椎間関節などによって受け止められます。

 椎間板は、激しいショック、例えば、激しいスポーツや過酷な労働をして、特定の椎間板に無理な力が常に加わったり、栄養失調や老化などがあると、繊維輪に裂け目ができ、ここから髄核の水分が失われて、次第に乾燥してしまいます。
 こうなると椎間板の弾力性はなくなり、ショックを吸収する働きも減少し、椎間板の高さも低くなってきます。
 老人になると背が低くなるのも、この椎間板の高さが低くなることが、原因の一つとなっています。また、ショックがうまく吸収できなくなると言う事は、無理な力が一層加わると言うことになり、椎間板は、ますます押しつぶされ、裂け目も大きくなったり数を増やしたりすることになり、繊維輪が椎体の周囲にはみ出したりする様になります。

 椎間板ヘルニアと言う、ひどい腰痛を起こす病気は、この様に椎間板が押しつぶされて、椎体の後方にはみ出して、脊髄がそこから出た神経を圧迫するために引き起こされるものです。
 脊椎は体をまっすぐに保つだけでなく、椎骨の後方にある脊椎管の中には、脊髄神経と言って、脳の延髄から出て、頚椎・胸椎・腰椎・仙椎まで通っている神経があり、この神経は、背骨に保護されながら走っている神経の束で、それぞれの椎間孔から左右一対の枝を出し、この神経が椎間板を横切って、体の中に張り巡らされ(これを末梢神経と言う)脊髄を通して、脳からの情報を受けたり、または、反対に末梢神経から脳へ情報を送ったりします。ですから、例えば、老化などによって椎間板が変化を起こし、繊維輪に裂け目ができ、髄核がはみ出したりして、脊髄や、そこから出た神経を圧迫すると、その圧迫される場所によっては、肩や腰などに痛みを感じる様になる訳です。

 腰痛の種類 

 現在、わが国で腰痛に悩む人は、200万人とも言われるほど、家族や周囲の友人にもきっと「腰が痛くて」と、顔をしかめている方がみえると思います。
 腰痛の原因は様々ですが、一番多いのが、日常生活の中での腰の筋肉の使い過ぎです。そのほか腰痛を引き起こす病気もあるでしょうし、腰に原因があるのではなく、胃や肝臓などの内蔵に病気があるために腰が痛むと言った場合もあります。この様に腰痛と言っても素人が原因を判断する事はなかなか困難です。ですから、早期に原因をしっかり見つけて、正しい治療をする事が大切なことです。

 姿勢による腰痛 

 姿勢が正しく保たれるのは、腰の部分を取り巻いている靭帯と筋肉が、腰椎を支えているからです。更に腹部の筋肉群(腹筋と言い、体を前に曲げる働きをするので屈曲筋と言う)と、背部の筋肉群(背筋と言い、体を伸ばす役割をするので伸展筋と言う)がバランス良く保たれて、正しい姿勢が維持されます。ところが、老人などによく見られる様に、背中を丸くして首を前に突き出した姿勢をしていたり、肥満ぎみの中年男性に見られる様に、おなかを突き出した姿勢など悪い姿勢を持続的にしていると、椎間板や椎間関節、そしてその周囲の筋肉や靭帯などにストレスが加わって、腰椎の原因となってしまいます。

 ギックリ腰による腰痛 

 何気なく重い物を中腰で待ち上げたり、ちょっと腰をひねった時に、息もできない程の強い痛みが来ることがあります。医学的には、急性腰痛症とか、突発性腰痛症と言いますが、ギクッとする事から、通称「ギックリ腰」と呼ばれます。

 原因となるのは、背骨の後ろを走る靭帯が切れるか、切れかかっている。背骨の後ろにある小さな関節突起間関節がが飛び出して、はずれかけたり、関節の間の滑膜がはさまれた時。重症の方では、椎間板がつぶれたり、椎間板ヘルニアになった時。筋肉や筋膜が肉離れの状態を起こした時。など、症状も重いものから少し休めば治るものまで様々です。生まれつき脊椎の弱い人や、脊椎が老化している人の場合、無理が掛かると簡単にこの様な状態を引き起こしてしまいます。

 椎間板ヘルニアによる腰痛 

 私たちの脊柱には、23個の椎間板が有ります。腰椎に有る椎間板は、その中の4個です。椎間板については前記しましたが、椎骨と椎骨の間にある弾力性に富んだ軟骨で、水分を多く含んでいる髄核と、これを取り囲む輪状の繊維輪から成り立っています。ところが、この椎間板には、毎日重い物を持ちあげたり、スポーツをしたり、長時間立ったままの仕事など、かなりの強い力(負担)が、加わっています。しかも、それにもかかわらず、椎間板には血管が無く、この力に対抗するためのエネルギー(栄養)は、周囲の組織から浸透圧で補給されるだけで、血管がたくさん通っている筋肉の様に、活発な新陳代謝によって、迅速に疲労を回復することができません。そのために、髄核の中の化学成分に変化を起こし、繊維輪に裂け目ができたり、髄核が飛び出したり、椎間板がつぶれたりする様になるわけです。これは、椎間板の老化現象で、20代で、もうこの老化は始まっているのです。椎間板ヘルニアと言うのは、こう言った老化現象の中で、椎間板中央にある髄核が、これを包んでいる繊維輪の裂け目から脱出し、脊髄から出た末梢神経の始まり部分(神経根)を圧迫した状態を言います。

 椎間板ヘルニアの起こりやすい場所は、第四腰椎と第五腰椎の間にある、第四椎間板が最も多く、次いで、腰椎と仙骨の間の第五椎間板で、仙骨に対して30度、前方に傾いているため、そこに掛かるストレスが大きいためと言われます。
 ですから、前かがみで物を持ち上げたり、激しいスポーツで腰を捻ったり、長時間、不自然な姿勢で仕事をしたりした時など、その事がきっかけとなって、ヘルニアになる事が多いのです。

 腰の痛みと共に足にも痛みやしびれが来る 

 椎間板ヘルニアは、髄核の飛び出した場所によって、症状も色々です。もし、ヘルニアが中央に飛び出して、神経根の束を圧迫した場合は、腰痛が強くなりますが、椎間板ヘルニアは左右どちらかに飛び出す事が多く、その側の神経根が圧迫されるため、腰痛と共に、圧迫された神経根が分布している側の下肢にも痛みが走ります。特に腰椎は、骨盤に近い第四腰椎と第五腰椎の部分で飛び出す事が多く、この間にある神経根が圧迫される事になります。この第四腰椎と第五腰椎の間にある神経と、第五腰椎と第五仙椎間にある神経を坐骨神経と言います。そこでこの神経が圧迫されて出る痛みを、坐骨神経痛と言い、尻から大腿の後側に走る痛みやしびれがあります。

 どんな人が腰椎椎間板ヘルニアになるか 

 来院患者さんを見ると、けっして肉体労働をする人や、激しいスポーツをする人ばかりでなく、ごく普通のサラリーマンや主婦などたくさんいます。そういった人は、生まれつき腰椎や椎間板に異状があったり、弱かったりする以外は、姿勢が悪かったり、運動不足によって、背筋や腹筋が弱く、自分を鍛える事を忘れている人達が多いのです。年齢も20〜30歳代ぐらいの若い人に多く、毎日仕事に追われるサラリーマン、不規則な生活をする学生など、本当ならば一番元気に活躍すべき人に、最近多いのは何故でしょうか、もっと、自分の体を鍛え、大切に維持する意志が欲しいものです。

 変形性脊椎症による腰痛 

 この腰痛は、椎間板ヘルニアが若い人に多いのに対して、40歳以上の人に多く見られます。つまり腰椎の老化現象と言う事になります。ヘルニアで前記した様に、椎間板は20歳頃から老化が始まり、変性して薄くなり充分なクッションの役目を果せなくなり、腰椎は余分な衝撃を受ける様になります。こうなると、椎体は硬くなり、更に、進行すると、椎体の周囲に骨のトゲができる様になります。この様な変化は椎体の全周にわたって起きますが、このトゲが後方にできると椎間板ヘルニアと同じ様に、神経を圧迫することになります。更に脊椎の後ろにある脊椎間関節にも起こります。この関節は、膝やその他の関節と同じ様に、軟骨でできており、背中を曲げたり伸ばしたりする時は、この関節がすり合わさるので、老化現象が起きると、この骨も弾力を失い、すり減って動きが悪くなります。その上、椎弓と椎弓の間にあって、これを固定する働きをしている黄靭帯なども、老化現象を起こし弾力性を失ってしまいます。

 この様に変形性脊椎症の痛みは、脊椎が老化して柔軟性を失い、外部から加わる力に耐えられないために起こると言えるでしょう。これらの老化現象による痛みの特徴は、1.朝起きた時に痛む。2.日中は動けるのに夕方痛む。3.中腰から腰を伸ばそうとした時に痛む。などがあります。この様な痛みがある時は、どうすれば良いかと言えば、老化現象が原因であるのですから、無理な負担を掛けないのが一番ですが、じっとしていたのでは、かえって筋肉や靭帯を弱くしてしまい関節もますます錆び付いてしまいます。適度な運動で血行を良くし、腹筋・背筋を強くする事で、姿勢を正しくする事にもなります。この様に、治療院に来て頂く前に、積極的に体を鍛える心構えを持つ事が、変形性脊椎症を予防し、より良い治療につながると思うのです。

 脊椎分離症・すべり症による腰痛 

 この腰痛は椎弓の一部が先天性、或は過激な運動、特に体を反らせる運動を続けたり、一瞬に激しく反らせたりした場合に、切れてしまった状態を言います。
 脊椎すべり症と言うのは、この脊椎分離症のことを言い、切れた上の脊椎がすべって前へ(まれには後ろへ)出た状態を言います。ほとんどの場合、第五腰椎に起こりますが、時には第四腰椎などにも起こることがあります。

 スポーツをする人に多く見られる 

 激しいスポーツをする人や重労働をする人に多く見られますが、脊椎がこの状態にある人達全てに症状が出るわけではなく、たまたまレントゲン検査で見つかると言う事も多いのです。ですからこの様に痛みの症状もなく、日常生活に何の影響も無い場合は、例え脊椎分離や脊椎すべりの状態があったとしても、この人には脊椎分離症やすべり症と言う病名は付けられず、まったく心配もいりません。

 合理的なトレーニングをすることが大切 

 脊椎分離症の症状としては、やはり腰の痛み、特に腰から臀部に掛けての痛みが多く、椅子に腰掛けているとか、立っているなど同じ姿勢を長く続けていると痛みが強くなったり、反る様な姿勢もつらくなります。しかし、これらの症状も安静にしていれば軽快すると言った程度の人がほとんどです。ところがこう言う人達が病院へ行くと、医師によってはコルセットを付けさせたり運動を禁止されると言う場合が多いのです。しかしこれは行き過ぎで、それでは筋肉がコルセットに頼って、更に筋力を弱くしてしまい、いつまで立っても痛みから逃れることができなくなってしまいます。確かにこう言った人は骨格上に弱点があるのですから、これを支える腰背筋、腹筋を強くすることが、大切なことだと思います。

 骨粗鬆症による腰痛 

 高年齢女性に多く見られ、閉経後10年位立つとホルモンのバランスや栄養等の影響で骨がやせて、カルシウムが抜け、骨のキメが軽石の様に荒くなるもので骨粗鬆症とか骨多孔症と言います。レントゲンでは輪郭だけ見えて、中が抜けているのがわかります。こういう骨はちょっとした事で、骨がつぶれて圧迫骨折を起こしてしまいます。カルシウムとタンパク質を充分に取って、筋肉や靭帯を強く鍛え、血行を良くする事で痛みを抑え、骨折などを予防することができます。

 その他の原因で起こる腰痛 

 今までお話しした病名の他にも、腰痛の原因は色々あります。例えば、脊椎が結核菌に侵される脊椎カリエス。色々な化膿性病原菌が、骨髄に入って起こる骨髄炎。脊椎の癌や腫瘍などができた場合にも腰痛が起こります。その他、腎臓に石ができる腎盂結石や、尿管に石が詰まる尿管結石になった時にも腰に痛みがあります。女性の場合、子宮癌や子宮筋腫のある時や、妊娠中などにも腰痛を訴えます。また、内科的な病気、例えば、胃の病気、肝臓病、大腸癌などの時にも腰痛があります。なかなか取れない腰痛があったり、強い痛みの腰痛がある時は、必ず医師によりその原因をはっきりさせ、早期に適切な治療を受ける事が大切です。以上の様に、腰痛といっても色々なケースがあります。自分の腰痛は、どれに属するかという事と、注意点さえ理解できれば、それに適した治療を進めれば腰痛は治療できるものです。

 毎日、必ず腰痛を訴えて来院する人が後を絶ちません。そんな、患者さん達の話を聞くと「腰が痛いから、子供に乗ってもらったら気持ちが良かった」とか、指圧をしたとか、整体術に行ったとか、少しでも早く良くしようと試行錯誤の自家治療法を試みた結果に、いつまで立っても治らないという事で来院頂きますが原因・症状・時期などによっては良いとしていた事が、本来は、まったく逆効果で、かえって脊椎に負担を掛けている事の方が多いのが現状です。急性期には暖めるより冷やす方が良く、強い圧迫や指圧、無理な矯正術も良くありません。

 ですから治療中も、できる限りこうした説明と、今後、気を付けて頂きたい注意点・生活法などを、お話しするよう心掛けています。

 確かに、数回の治療で腰痛は抑えられ、大変楽になりますが、治療をしたからといって安心して頂いては困ります。一度痛めた脊椎は、ふたたび痛める可能性を充分に兼ね備えているのです。
 日常の、ちょっとした心掛けから、注意をしていかなければ、何をするにも常に負担の掛かっている脊椎・腰を、良い状態で保持して行く事は、不可能といえるからです。




● 腰痛体操

 腰痛体操は日常生活で腰に掛かる負担を、しっかりガードするための筋力と、常に負担の掛かっている背骨(腰椎)に対して疲労を取って、腰痛を少しで軽くしようとする体操です。

 リハビリでの腰痛体操は、医師や理学療法士が診断の上で 指導するものですが、ここに示す腰痛体操は、家庭で機具を使わず、自分一人で行える基本的な腰痛体操を解説しました。
 一日3回〜7回に分けて年齢や体力、その時の病状に応じて、根気良く無理をしないように行うことが原則です。運動順序などは、あまり気にしなくてかまいませんが、まずは3ヶ月間、続ける事を目標にして下さい。

 但し、腰痛の急性期は安静状態を保つのが原則です。ここに紹介する体操は基本的な軽い体操ですが、病状によって行って良い場合と、悪い場合もありますので注意して下さい。

寝た状態で行う基本的な腰痛体操

 まず基本姿勢

1.あおむけに寝て両膝を立てる。(これが基本姿勢になります。)
2.両手を頬に固定させ、鼻からゆっきり息を吸う。
3.口からフゥーと息を押し出すように腹式呼吸息をする。

 腹筋運動(基本動作)

 ゆっくり頭部を持ち上げ、肩が床から25cm程度のところで5秒間静止させ、ゆっくり元の基本姿勢に戻す。(腹式呼吸をする)
 病状や年齢に応じて、この動作を3回〜5回繰り返します。

 腹筋運動(応用動作)

 基本姿勢で、右手で左膝をさわるように体をねじりながら、ゆっくりと起き上がる。この動作を左右3回〜5回繰り返します。(腹式呼吸をする)

 骨盤回旋(殿筋運動)

1.基本姿勢で、両手をおへその上、或は、腰にあてながら、お腹をちぢめる感じで、背骨を床に押し付ける。
2.首を少し持ち上げて、おへそを覗くようにする。これも3回〜5回繰り返します。

 腰の回旋(ねじり運動)

1.腰に両手をあて、両下肢を伸ばす。
2.息を吐きながら、どちらかの足を伸ばしたまま、もう片方の足を越えるように大きく交差させる。この運動を交互に3回〜5回繰り返します。

 両膝かかえこみ運動

1.基本姿勢から両膝を同時に抱え込む。
2.股と両膝の間を肩の幅に開いて、胸(脇)の方にゆっくり引き寄せる。この動作を連続20回ほど行います。

椅子に座った状態(職場など)で行う運動

 おへそ覗き運動

1.椅子に浅く座ります。
2.ゆっくり背筋を伸ばし胸をはります。
3.両足を開き、できるだけ背中をまるめ、おへそを覗くような感じで、お腹をへこまします。
4.ゆっくり背筋を伸ばし胸をはります。この動作を適度に繰り返します。

 膝かかえこみ運動

1.椅子に深く座り、片膝を脇の下へかかえこみます。
2.この動作を左右交互に適度に繰り返す。

 おじぎ運動

1.椅子に浅く座り、腕組みをして背中を丸めます。
2.両足を開き、深く前屈しておじぎをします。

立った状態(外出時など)で行う運動

 しゃがみ運動

1.両足を30cmほど開いて立ちます。
2.あごを引き、おなかをちぢめ背骨をふくらます感じで力をいれます。
3.かかとが浮かないように、ゆっくりしゃがみこみ運動を繰り返します。

 脚交差おじき運動

1.両足を揃えて立ちます。
2.足を交差させ、前に出した足の膝を曲げ、後ろ側の膝を伸ばします。
3.そのまま、ゆっくり前屈しておじぎ運動をします。
4.足の前後の交差を変えて交互に行います。

 膝立てふせ運動

1.両手、両膝をついて四つばいになります。
2.片方の膝をできるだけ胸に近付け、もう片方の足を、できるだけ後方に伸ばします。
3.この状態で腕立てふせをするように、体を低くします。
4.この運動を左右10回行います。


 情報室 MENU に戻ります