◆ 関節の炎症1

● 化膿性関節炎

【原因】

 主に黄色ブドウ球菌による関節滑膜の化膿性炎症です。体のどこの関節にもおこる可能性があります。
 体の別の化膿した部分から血行感染、近くの骨の骨髄炎からの感染、開放損傷による感染などが考えられます。

【症状】

 発熱し、患部は赤く腫れあがって熱を持ち、激痛があります。
 白血球は増加し、血沈は異常に早まります。関節軟骨は破壊され、関節を動かす機能は失われます。

【治療】

 抗生物質の投与と切開排膿、関節洗浄が行われます。




◆ 関節の炎症2

● 関節結核(Joint-Tuberculosis)

【原因】

 肺から血行感染する場合が多く、また、骨結核から感染する場合もあります。股関節と膝関節によくみられます。

【症状】

 患部は腫れあがって痛みます。進行すると関節は破壊され、運動制限や関節周囲の筋肉は萎縮します。

【治療】

 初期は、抗結核薬を投与して安静にします。関節部の破壊がひどい場合は、固定手術を行います。




◆ 関節の炎症3

● 慢性関節リウマチ
   (Rheumatoid Arthritis(RA)

【原因】

 全身の関節に慢性的に炎症をおこす病気で、原因はまだはっきりとしていません。遺伝、感染、免疫異常が考えられています。

【治療】

 薬物療法で効果がない場合や、重い機能障害が手術によって改善できると予想できる時は、整形外科的治療(手術)が必要となります。手術は、その時期と目的によって二つに分けられます。

滑膜手術

 炎症を除き、痛みをおさえるために、炎症を起こしている関節の滑膜を早期に切除します。

機能再建手術

 日常生活機能の改善をはかるために、前進的な管理のもとに、タイミングを見て行われます。

(1)人工関節置換術

 関節に負担がかかって病気の悪化が著しい場合や、歩行障害などがある場合、関節を人工関節に換えてしまいます。
 膝や股関節に行われ、急に症状が良くなることもあります。

(2)関節形成術

 特に肘関節のように、大きな負担はかからなくても運動が傷害されて、日常生活に支障を来たす場合に行われます。

(3)関節固定術

 慢性関節リウマチでは、多数の関節に病変があらわれ、破壊が進行します。痛みが強く、早期に適切な位置での関節固定が望まれる時に、手首や足首の関節に行われます。

(4)骨切り術

 膝や股関節に変形がある場合、骨端を切り取り、変形を矯正することがありますが、人工関節が発達したので、この手術は少なくなりました。

【経過と予後】

 人工関節の進歩によって、手術の時期や適応がうまくあえば、寝たきりであった人が、起きて歩くことができるほどの劇的な効果が期待できることもありますが、この病気の複雑な性質と、手術が重傷患者に行われることが多いことから、予後を予測することは困難でもあります。
 しかし、手術による治療効果は、痛みを除くことと、機能の改善に関して、他の治療法に比べて一般に優れています。
 また、手術の効果を期待するために、何回か手術を繰り返す場合もあります。




◆ 関節の炎症4

● 痛風性関節炎(Gouty Arthritis)

【原因】

 痛風に伴う関節の炎症で、発熱、激痛が生じます。高尿酸血症、痛風の治療によって良くなりますが、手術が必要な場合もあります。
 尿酸の合成が過剰に行われたり、腎臓からの尿酸の排泄がうまくできなくなったりして、尿酸の代謝が障害を受けると、体の中の尿酸は過剰になり、やがて尿酸ナトリウムの結晶が関節の隙間に沈着して、急性の関節炎症状をおこします。

【症状】

 明け方に突然、足の親指が赤く腫れて激痛を感じる。と言う症状での発病が最も多いと言われます。
 この痛みは、数日で消えますが、発作を繰り返し、次第に間隔も短くなります。熱感、発熱、白血球の増加などもみられます。耳たぶ、手足の指、肘、アキレス腱部の皮下に痛風結節ができることもあります。

【診断】

 問診、視診、血液検査、X線検査(骨の打ち抜き像があるのが特徴)などが行われます。

【治療】

 急性の発作時には、患部を高くし、冷やして安静を保ち、ステロイド薬、非ステロイド系抗炎症薬などの消炎鎮痛薬を服用します。
 慢性期には、尿酸排泄促進薬か尿酸合成抑制薬などの高尿酸血症に対する薬物療法、食事療法が行われます。
 尿酸を合成するプリン体(プリン体は、遺伝子をつくっている核酸の主成分で、主にアミノ酸から体内で作られるものです。プリン体が体内で分解されてできた産物が尿酸です。)を多く含む肉類、レバー、豆類をなるべく制限し、野菜や果物を十分取り、水分も多く取って尿量を多くするようにします。アルコール類を控え、肥満を解消することも大切です。また、痛風結節を根治するには手術が必要です。




■ 化膿性骨髄炎

【原因】

 主に黄色ブドウ球菌による骨髄の炎症ですが、骨質、骨膜に及んだものを言います。発育期の男子に多い病気で、開放性骨折(傷のある骨折)により直接骨に感染する場合と、化膿した傷や、扁桃炎から血液を経由して感染する場合があります。
 骨の組織が破壊され、炎症が慢性化した場合には、炎症が引き続き、膿も止まらなくなるため、腐った骨を除去します。

【症状】

 高熱が出て、白血球が増加します。患部には激痛を感じ、赤く腫れ上がり熱を持ちます。

【治療】

 抗生物質を注射し、細菌の増殖を抑えた後、患部を開き、膿を出し、腐った骨を切除します。その後もしばらく抗生物質の投与を続けます。




■ 化膿性脊椎炎

【原因/症状/治療】

 主に黄色ブドウ球菌によっておこる脊椎の骨髄炎で、まれな病気です。 悪寒、高熱を発します。しかし、脊椎が体の深いところにあるため、局所に症状があらわれるのが遅くなります。
 安静を保ち、抗生物質を投与し、局所を切開して排膿をおこないます。


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