● 変形性関節症

 体の各部の関節、特に股、膝、肘などの大関節に炎症が発生し、痛みや運動制限をもたらす病気です。
 関節軟骨の変性と、周辺部の骨や軟骨の増殖が同時に進みます。
 おかされる関節によって、変形性股関節症、変形性肘関節症、変形性膝関節症、変形性足関節症などと呼ばれます。




● 変形性股関節症
   (Osteoarthritis of Hip Joint)

 股関節やお尻、もも(大腿部)に痛みがあり、股関節の運動が傷害されて、日常生活の動作に支障をきたす進行性の病気です。

【原因】

 多くは先天性股関節脱臼や、その治療後の骨頭の変形、外傷、炎症、特発性大腿骨頭壊死などが原因となります。
 特に新生児期に先天性股関節脱臼の治療が不十分である場合、後に変形性股関節症が発病するケースが多くなります。
 先天性股関節脱臼は、新生児、乳児期に早期発見し、しっかり治療しておくことが大切です。ペルテス病(小児期に大腿骨骨頭の血行が傷害され変形する疾患)や、股関節内の骨折後にも発生することがあります。

【症状】

 股関節周辺の痛み、運動制限、足の長さの違いなどで、通常、歩行により痛みがまし、安静で痛みはやわらぎます。

【診断】

 視診、触診、X線検査などを行います。

【治療】

 年齢、関節の変形の程度によって治療は異なります。痛みの激しい時は安静にし、温熱療法、薬物療法(消炎鎮痛薬の投与)が必要なこともあります。
 股関節に過大な負担がかからないように肥満の防止や、場合によってはステッキの使用なども指導されます。
 股関節周囲の筋肉を鍛え、関節の動きを保つため運動療法も効果的です。特に自転車こぎや、水泳などがすすめられます。
 このような療法で効果が無い場合や、病状の進行が予想される場合は手術を行います。大腿骨骨頭を包む臼蓋の形成手術、骨の角度を変えて体重のかかる面積や位置を変える手術、高齢者で変形が強い場合には、人工股関節に交換する手術なども行われます。

【経過と予後】

 先天性な異常が原因となる場合は、新生児期、乳幼児期に発見し、整復すれば、進行を予防できることも多いのですが、通常、変形は年齢とともに進行します。手術のタイミングを失わないようにして、体重のコントロールや適切な運動をすることによって、痛みに悩まされる機会を少なくすることができます。標準体重を超えないように、また、重い荷物を持って長時間歩くことなどは避けるなど、自己管理に努力することが大切です。




● 変形性膝関節症
   (Osteoarthritis of Knee Joint)

【原因】

 関節軟骨が年齢にしたがって変形することが第一の原因となり、肥満による体重負担、膝関節での足の軸の曲がり、特にO脚などが加わって発生します。 長時間の歩行や重いものの運搬の後、或は、和式トイレや正座などによって膝を深く曲げたりすると症状が出てきます。
 また、膝関節内の骨折後。膝関節の半月板の損傷。半月板摘の出手術の後。関節を前後左右に安定させる十字靭帯や側副靭帯の損傷の後にも、発病することがあります。

【症状】

 膝関節を動かすと痛みを感じます。特に歩きはじめに痛むことが最初の症状であることも多く、膝関節が腫れ、いわゆる水が溜まるという関節水腫がみられます。たくさん水が溜まると、膝蓋骨(膝の皿)を膝を伸ばした状態で上から押さえるとコツコツと音をたてることがあります。
 更に進行すると、膝が完全に伸びにくくなり、曲がりも十分でなくなります。関節水腫が無くなっても膝周囲の組織が厚くなって大きな膝になってきます。
 軟骨の変性が進と軟骨が無くなってしまいます。軟骨の下の骨まで摩耗・変形し、益々O脚はひどくなってきます。

【診断】

 問診、視診、触診、X線検査の他、特に関節炎をおこす疾患との鑑別のため、血液検査を行うこともあります。

【治療】

 痛みが激しい時期は安静にし、湿布、消炎鎮痛薬の投与が行われます。関節内への軟骨保護薬の注射が効果を示すこともあります。特に痛みの激しい時は、関節内に副腎皮質ホルモンが投与されることもありますが、骨頭壊死などの副作用や、痛みが無くなるために関節を使い過ぎて、かえって進行を早めたりするなどの欠点があるため、長期使用は避けています。
 温熱療法、筋力強化などの運動療法なども効果があります。これらの療法で効果がない場合は手術が行われます。手術は主に膝の軸を変えたり、人工関節と置き換えたりします。

【予後】

 寒さが痛みを強めることが多いので冬は保温に努め、夏は冷房の効いた場所に長くいる場合なども、膝かけなどで保温に気を付けましょう。痛みの少ない時には、膝の動きを保つために、やや高い椅子に腰掛け膝関節をよく動かし、大腿の前面の筋肉を強くする運動(膝を伸ばしたまま足を引き上げる運動)などを数ヶ月続けることで効果が望めます。




● 変形性肘関節症
   (Osteoarthritis of Elbow Joint)

【原因】

 常に反復する力が肘にかかる職業の人に多い病気です。肘関節の痛みで始まる場合もありますが、多くは肘関節の運動制限や関節の内側を通る尺骨神経の麻痺による薬指や小指のしびれ感、手の甲の骨間の筋肉の萎縮で病気に気が付きます。

【症状】

 職歴などの問診、筋萎縮や知覚障害の有無などの視診、X線検査、筋電図検査の他、リウマチなどの鑑別に血液検査を行うこともあります。

【治療】

 まずは安静が第一です。痛む場所への湿布、温熱療法や消炎鎮痛薬の投与、特に関節内ステロイド注射が行われます。
 関節内に遊離した骨や骨のトゲ(刺激により増殖した骨)が運動制限をおこしている場合は、摘出手術が行われます。

【予後】

 体重がかかる関節ではないので、それほど進行することはありませんが、いったん変形した関節が元に戻ることはありませんから、更に進行させない要注意が必要です。




● 変形性足関節症
   (Osteoarthritis of Ankle Joint)

【原因】

 足首の関節は単位面積あたりの体重負担が非常に大きいので、関節の中の骨折や捻挫後の関節の歪みが、年月を経てこの病気に発展することがあります。
 足の軸のズレや、長年の体重オーバーも、この病気の原因となります。

【症状】

 足首の関節に腫れや痛みがあります。進行すると運動制限がおこります。痛みは時に、歩くことができないほど痛いことがあります。

【診断】

 外傷歴などの問診、視診、触診、X線検査などを行います。

【治療】

 局所を安静にし、体重をかけないようにします。湿布、温熱療法などの理学療法や、消炎鎮痛薬などの薬物療法が行われます。
 痛みが続き、日常生活に不便を感じる場合は、関節を固定する手術や、時に人工関節に置き換える手術が行われます。

【予後】

 症状が出ると、体重をかけている限り少しずつ進行します。足首周辺の骨折は専門医による治療が必要です。捻挫でも時に重要な靭帯を損傷して、後になって足首への負担が大きくなることがあるので注意が必要です。


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