● 骨粗鬆症(Osteoporosis)

 年をとるにつれて身長が縮まり、背中や腰が曲がり、腰痛がひどくなったり、すぐ骨折をするようになった場合、これは骨粗鬆症であると言って間違いありません。
 骨量が減少して骨がもろくなります。最も多いのが、閉経後5年〜10年であらわれる閉経後骨粗鬆症と、高齢者の老人性骨粗鬆症です。特にやせ型の50歳以上の女性に多く見られます。
 脊椎骨(背骨)に早くあらわれることが多く、進行すると容易に圧迫骨折をおこします。長管骨の大腿骨頚部(足の付け根)、橈骨遠位端(手首)、上腕骨外科頚(腕の付け根)なども骨粗鬆症の高齢者に多い骨折箇所です。
 このうち、特に大腿骨頚部を骨折したことが原因で、寝たきりになる場合が多いので、骨粗鬆症の予防に心がけることは健康に年を取るためにも大変重要なことです。

【原因】

 年齢による骨組織の老化が基盤となり、それにカルシウムの代謝や内分泌の変化が加わり、骨の量が減少してきます。
 骨を石にたとえると、軽石のように密度が粗くなり、もろくなってしまいます。老人になると骨の老化で骨量が減るだけでなく、腎臓の働きも衰えて、活性型ビタミンDを合成する能力が低くなります。
 活性型ビタミンDは、カルシウムやリンの吸収を促す働きがあります。また、骨へのカルシウム、リンの沈着を促す作用もあります。そこでビタミンDが不足すると、体内のカルシウム、リンが減り、骨からこれらの無機質が溶け出すことによって、骨は小さく、もろくなり、骨粗鬆化がおこってきます。
 また、ビタミンDが活性型ビタミンDに変わるには、紫外線が必要です。年を取ってあまり外出しなくなり、紫外線にあたることが少なくなったり、運動量が減ることも骨粗鬆症を引き起こす誘因になります。
 それに加えて、運動量が少なくなると、骨の中の血液が酸性に傾き、カルシウムが溶け出しやすくなり、骨の細胞も不活発になり、骨量の現象を招きます。
 閉経を迎えるとエストロゲンという、強力な女性ホルモンの分泌が激減します。この女性ホルモンは、骨を作る細胞の働きを活発にし、腎臓での活性型ビタミンDの合成も促進しています。したがって50歳以上の女性は骨粗鬆症に大変かかりやすくなります。勿論、カルシウムの摂取不足も原因の一つです。

【症状】

 腰や背中が重く感じたり、痛んだりする慢性的な腰痛が非常に多いのですが、これらの症状とX線上で診断できる骨粗鬆化の程度とは必ずしも一致していません。
 また、骨がもろくなっているので非常に骨折しやすく、軽い外傷でも脊椎の椎体に圧迫骨折をきたし、急性の腰痛や背部痛をおこします。
 その他、背中や腰が曲がったり身長が縮んだり、亀背(背骨の部分が突出する)や円背(背中が丸くなる)がみられることがあります。

【診断】

 問診、視診、X線検査などが行われます。一般的に60歳以上の女性で腰が曲がっていて腰痛があれば、まずこの病気ですが、X線所見によって確定します。
 X線所見では、骨の陰影濃度が薄く、椎体の骨梁(骨の中の網目構造)が細く小さく、粗くなります。
 椎体は椎間板に圧迫されて魚椎、楔状椎、扁平椎、などといわれる変形がみられるようになります。
 椎体の変形は、骨粗鬆化が進むにつれてひどくなり、圧迫骨折もみられるようになります。

【治療】

 急性の腰痛、背部痛は、約3週間の安静と消炎鎮痛薬や筋弛緩薬の投与で軽減するので、その後は軟性コルセットなどを着けて、早期に床を離れ、運動を始める方が、骨量現象を促進させないためにも望ましいことです。
 慢性の腰背痛には、理学療法や生活の指導が行われます。また、骨粗鬆症に対する薬物療法としては、カルシウム製剤、活性型ビタミンD、たんぱく同化ホルモン、カルシトニン製剤などの投与が行われます。
 骨量増加は殆ど望めず、骨量減少の進行防止(現状維持)が期待できる程度です。


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